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心輝かせて

片柳 弘史 神父

今日の心の糧イメージ

 ある山奥の村の村長が、町にやって来て、生まれて初めて電球を見た。まばゆく輝いて夜の闇を照らす電球の力に感動した彼は、町の電気屋で電球をたくさん買って帰った。ところが、それらの電球は、彼の村では輝くことがなかった。なぜなら、彼の村にはまだ電気が通っていなかったのだ。

 人間も、電球のようなものだと思う。どれだけ大きな力を秘めた電球も、電気なしでは決して輝くことができないのと同じように、どれだけ大きな力を秘めた人間も、自分だけでは決して輝くことができない。勉強して資格をとったり、お金を稼いで着飾ったりしても、人間は決して自分だけでは輝くことができないのだ。

 人間を輝かせるために必要な電気、それは人と人とがつながるとき、そこに生まれる、目に見えない愛だと思う。人間は、誰しも光り輝く力を秘めているが、その力が発揮され、まばゆく輝きはじめるのは、愛という電気が通ったときなのだ。誰かから愛されている、自分はかけがえのない存在だ、自分の人生には意味がある。心の底からそう思えたとき、その人の顔は輝きはじめる。

 人間の不幸の多くは、最初に紹介した村の村長のように、電球がそれ自体として輝くことができると思い込むことから生まれるように思う。自分のことだけを考え、自分を磨き、自分を飾りたてることばかりに夢中になっている限り、わたしたちは自分の命を輝かせることができない。自分のことばかり考えるのをやめ、周りの人に心を開いたとき、家族や友人、そして神様とのあいだにしっかりと絆を結んだとき、わたしたちの心に愛という電気が流れる。そのとき、わたしたちの命はまばゆい輝きを放ち始めるのだ。輝きは、つながることからうまれる、そのことを忘れないようにしたい。