これで生涯安楽に暮らせると、友達を呼んで派手に宴会をする夫、お上さんは酔っ払った夫が寝込んだ隙に大家さんに相談にいきます。大家さんの助言のもと、魚屋は大金を拾ったのは夢だったといい聞かされ、宴会の借りを返すためすっかり心を入れ替えて働きます。
3年目の正月、お上さんはあの大金を夫に見せ、あなたが全うな心になってくれるまで黙っていた、すまなかったと詫びます。そして好きな酒を飲んで機嫌を直してとお酌をしようとします。
夫は一瞬揺らぎますが、「止めておこう。また夢になるといけねえ」と言って下げとなります。
魚屋の視点からこの話を考えると、私たち自身の心と重なる部分が出てきて大変興味深いと思います。
魚屋は酒とお金という最大級の誘惑に何度もなびきます。しかし最後はそれらを退けて仕事にまい進します。なぜそれができたのでしょう。お上さんの機転だけでは無理だったでしょう。
私は、彼が素直に心を切り替えて方向転換したことで、働くときの心の輝きを取り戻したからではないかと思います。
心を輝かせるには、まずそう願うこと、そして彼のように素直にそれに向き合うことが、こつなのかもしれません。