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心輝かせて

森田 直樹 神父

今日の心の糧イメージ

 中年、と呼ばれる世代の真っただ中にいる私であるが、心輝かせていた頃はいったい、いつだったか、と思い起こしてみた。すると、すぐに思い浮かんだのは、小学校に上がる前の頃のことであった。

 幼稚園も卒園に近づき、仲良くなった友だちやお世話になった先生方とのお別れが間近に迫っていたが、それよりも、小学校に入ることの喜びの方がはるかに勝っていた。

 「一日入学」で初めてくぐった小学校の門。廊下から漂ってくる独特のにおいをかぎながら、初めて入る小学校の校舎。幼稚園の運動場よりは、はるかに広い運動場。これらに驚きながら、初めて見る小学校の先生方と楽しいひと時を過ごした。

 この時、まるで一目ぼれのように、ある先生が大好きになり、一年生になったら、この先生が私の担任の先生だったらいいな、と小さい手を合わせて、一生懸命お祈りしていた。

 まだ見ぬ優しい友だち。学校での楽しいであろう生活。何をするか分からないけれど、おそらく、おもしろいにちがいない勉強を夢見て、買ってもらった真新しいランドセルを何回も何回も背中にしょって、何もかもが新しい小学校生活を待ち望みながら、春まだ浅い日々を心輝かせて過ごしていた。

 そして、桜が満開になる頃、私はピカピカの小学一年生として、小学校の門をくぐった。教室に入ると、何と、私のお祈りが届いたのか「一日入学」で大好きになった先生が担任の先生としてやってきた。こうして私のバラ色の小学生生活が始まったのである。

 この時、私には不安や恐れのカケラもなく、何の疑いも妬みもなく、ただ喜びと希望、新しさだけに満ちあふれていたのだと思う。心輝かせるとはどういうことか、心輝かせるためには何が必要なのかを、この思い出は私に思い起こさせてくれた。