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心輝かせて

熊本 洋

今日の心の糧イメージ

 人間は「輝き」に敏感、その煌めきを見逃すことなく、じっと、「輝き」を見つめる傾向があるようです。高い空に見る宵の明星や明けの明星、遠くに見る灯台の光、そして、身近に見るダイヤモンドの輝きなど、決して見逃さず、視線を注ぎます。その光は、眩しくはなく、心を魅了し、和め、夢を抱かせ、冒険への憧れを満たしてくれます。「輝き」は、沈み塞いだ人の心を開かせ、なにか、ほのかな希望をもたらしてくれる誠に有り難い、崇めたくなるような自然現象であります。人間を魅了する星の輝き、灯台の光、ダイヤの煌めき、この三つの輝きは、いずれも同じ光ですが、その出所がそれぞれ異なっています。星は天体に於ける太陽の反射、灯台は電気の光、ダイヤモンドは原石を人間が賢明に磨きあげての結果であります。

 ところで、ダイヤモンドの「輝き」には、曰く因縁があります。戦前戦中派の高齢者なら思い出す「金剛石も磨かずば、玉の光は沿わざらん。人も学びて後にこそ、誠の徳は表わるれ」の昭憲皇太后の御歌であります。昭憲皇太后は、いみじくも「心の輝き」を詠われ、その大切さ、その磨き方をも説いておられます。御歌の二番「人は器に従いて、その様々になりぬなり」は、画一的教育に翻弄されがちな今の日本の教育に、まさに、一石を投じるものであります。仕事でもスポーツでも、そこに何か卓越した熟練度と熱意と誠意、それに人を気遣う気持があるならば、その人には後光が射し、輝きが自然に備わるのではないでしょうか。

 「金剛石も磨かずば」の精神が、この21世紀、あらためて省みられることを願っております。

 「心の輝き」それはキリスト精神の発露でもあります。