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心輝かせて

岡野 絵里子

今日の心の糧イメージ

 カタバミという小さな多年草をご存知だろうと思う。10センチに満たない丈で、可憐な黄色い花とハート型の葉をつける。クローバーに似ているが、雑草なので、庭に生えたら、むしられてしまうかもしれない草花だ。

 ところが、カタバミの花言葉は「輝く心」なのである。花言葉がどのように決められるかは知らないが、はっとさせられる命名ではないだろうか。抜かれ捨てられがちなものが心の輝きだとは、皮肉であるが、それでも、小さな草が誇りをもって、与えられた生命に輝く姿が想像できるのである。

 人間にとって、輝きとは何だろう。輝かしい業績、輝くばかりの美貌、勝利に輝く・・こうしたものなら分かりやすい。なぜなら、これらは目によく見える。だが、心の輝きと言われると、よく分からない。心は見えない場所にあるからだ。ちょうど、大切なものが人目に曝されず、奥まったところにしまっておかれるように。ただ、心がなした仕事が形になるのを、私たちは見るのである。

 小さなカタバミにならうとすれば、心の輝きとは、ささやかな自分に誇りと自負心を持つことだ。自分以上のものを望まない。見栄を張ったり、嘘をついて自分をよく見せようとしたりしない。そして、与えられた自分自身を発揮して、善きものへ向かう時、見えない心は輝くのではないかと思う。

 カタバミは繁殖力の強い植物だそうだ。一度根付くと、除去するのが難しい。小さな草花の根が、見えない地面の下で逞しいように、私たちの心も光の方角を知り、強く輝いていたいと願っている。