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それでも感謝

末盛 千枝子

今日の心の糧イメージ

 実は私は若いころ、聖パウロの「いつも喜んでいなさい、たえず祈りなさい、すべてのことについて感謝しなさい」(1テサロニケ5・16〜19)という言葉がなんだか苦手でした。「すべてのことについて、感謝しなさい、」と言われても、なかなかそうはいかないものなあと思っていたのです。

 でも、この年になって、「これはまことに素晴らしく、全くその通りです、聖パウロ様」と言いたいようです。とても難しく、そこから逃げ出すことなどとうてい出来ないかのような困難にあっても、乗り越えられない困難はないのだと知るようになったからでしょうか。

 確かに、本当に難しいところに、まるで舟が難破したような状態になってしまった時にでも、祈るうちに、状況が変わってくるのです。これは驚くべき発見でした。祈るのが、とても難しくても、これはすべて神様にお任せします、と相手に、と言っても、神様ですが、全部の荷物を投げ出してしまうような時、気がつくと、「恐れるな、私が共にいる」という声が聞こえてきて、状況は、かなり変わっているということがあります。それも、しょっちゅうあるのです。きっと、これこそが『それでも感謝』ということでしょうか。

 困難のうちにある息子を見ながら、本人はどんなに辛いことだろうかと思うのですが、母親とて人間の悲しさ、息子の体調が悪くて、あまりに機嫌が悪いような時には、本当に辛いと思います。でも、息子の傷の手当をしながら、これは神様から言い付かった仕事だものなあ、と思っていると、それほど大変でもないような気がしてくるのです。そして、いつの間にか、いろいろなことが好転しているようなのです。結局、あの困難の時があればこそ、ここに至ったのだと思うのです。それでも感謝ということでしょうか。