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それでも感謝

崔 友本枝

今日の心の糧イメージ

 数か月前に、私は「赤ちゃんポスト」を設置した病院長として有名な、慈恵病院の蓮田先生の講演を聞きました。この六年間で多くの赤ちゃんが助かったこと、また、出産前の事前相談で、女性たちが子供を生む決心をするなどの前向きな生き方を選んだことを知りました。

 講演の後、ある女性が皆の前で素晴らしい感想を述べました。「私は、養父母にとても愛されて育ちました。本当に感謝しています。血のつながりがなくても育ててくれた人が私の両親です。私は今まで生みの親を知りたいと思ったことは一度もありません。子どもには出自を知る権利がある、と言って偉い先生たちが養子縁組に反対しています。でも、当事者の声をもっと聞いてほしいです」と彼女は、たとえ肉親でなくても愛情を受けて育つことで子供は幸せになると知らせてくれました。子供を望みながら、わが子を得られない夫婦は世界中にたくさんいます。他方、赤ちゃんを育てられない事情のある女性も多いのです。

 妊娠3か月になると、赤ちゃんの小さな心臓は力強く脈打ち、耳はお母さんの声を聞いています。喜びや恐れなどの反応もあります。赤ちゃんの人生は始まっているのです。子供を望む夫婦と、この女性を結び付ける素敵なパイプがあれば、赤ちゃんは愛情のある家庭で育つことが出来ます。養子だとわかったら子供が辛い思いをするのではないか、という意見もあります。では、血のつながりさえあれば幸せになるのでしょうか。肉親による幼児虐待を見聞きする現況では、断定できないのではないでしょうか。

 「命を何よりも優先する」という考え方。それは、子供が神さまからの贈り物だからです。