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それでも感謝

土屋 至

今日の心の糧イメージ

 今から7年前に私は、鹿児島のカトリック教会で行われた教区の司教さんの着任式に参列した。

 そのときに記念品としていただいたものはタオルであった。このタオルを使って汗を拭き、垢を落とし、身を清めてくださいという、いかにもこの司教さんらしいユーモアの込められた記念品だった。

 そのタオルには司教さんの紋章とモットーが染められていた。これもいかにもこの司教さんらしいユニークなものであった。司教の紋章というと普通「楯」の形をしたエンブレムふうのものが多いのだが、この司教さんのデザインは闇に輝く「世の光」に照らされた2羽の鳩を描いている。

 その鳩は「それでも、喜び、希望、感謝」と書かれた日本語のモットーの上に描かれている。その図案の下には英語でもこのモットーが書かれていた。司教のモットーはたいていの場合ラテン語で書かれているが、この司教さんはあえて日本語と英語でそれを表現した。そこもユニークで型破りであった。

 そしてそのメッセージがまたいい。単に「希望や喜びや感謝するこころをもちなさい」というのではなく「それでも」ということばが前に付け加えられている。災害や不景気が続き、希望や喜びや感謝することのみいだしにくい時代であることを前提にして「それでも希望、喜び、感謝」というのである。

 こんなご時世に、希望や喜びや感謝で心が溢れている人がいるだろうか。いや、きっとこんなご時世だからこそこのような人が必要なのではないだろうか。この司教さんに限らず、神のため、人のために命をかける、信仰をもって生きている人は、皆このような心意気を持っているのではないだろうか。

 「それでも、喜び、希望、そして感謝」