しかし、困難の真っ只中にいる時には、「こんなに辛い状況を感謝なんか出来ないよ!」と反発したくなるのも人情でしょう。
それでも・・、私の胸に焼きついて、折に触れ思い出される感動のシーンがあります。
それは以前、夫とヨーロッパを旅行中、ウイーンの大聖堂でのことです。私たちの横で大きなリュックサックを背負った中年の男性がなぜか立ったまま祈っていました。ふとただならぬ様子にそっと見上げると、彼の目から涙がとめどなく流れているのです。その涙を拭いもせず、彼はマリア像を見上げて肩を震わせています。
「ああ!聖母のお取次ぎによって、主が今、この人の魂に触れておられる・・・!」私はじーんと胸が熱くなりました。
その旅人がどんな苦しみや悲しみを抱いていたかは知る由もありません。しかし私に一つだけ分かるのは、彼の心の苦しみや悲しみは今、主の哀れみに包まれて、優しく癒されている・・・という事でした。
『重荷を背負った人は私のもとに来なさい。休ませて上げよう』(マタイ11・28)と言われたイエス様は、「助けて下さい!」と祈り求める者の魂に、本当に生き生きと働かれて、その心の傷を癒し、全ては感謝の涙に変えられる・・・、その現場をかい間見た感動は今も忘れられません。