日韓の高齢者やボランティアの人たちが楽しく話しながら食事をする「サランバン」と呼ばれる食事会が毎週開かれます。シスターをお訪ねして祈りの集いに参加したときのことです。帰ろうとした私を呼びとめたシスターは「韓国では突然の訪問者でも、一緒にいる人には自分たちの食べる分を分けて食事を勧めるのよ。遠慮せずに一緒に食べましょう」と笑顔で誘ってくださいました。そして厚かましくも、おいしい食事と会話の仲間に入れていただきました。
来日間もない頃、シスターは仕事帰りに、修道院までの5キロの道をよく歩いて帰ったと耳にしたのでその理由を尋ねると、ぽつりと「だって、バスだったら、泣けないでしょ」とおっしゃったのです。その一言で、シスターが日韓両国の相互理解と信頼回復のために、数々の困難に耐えて、悲しみを乗り越えてこられたことを知りました。「涙の谷にも花咲き乱れ、香りもゆかしく喜び満たす」。イエス様と労苦を共にされた母マリア様を讃える聖歌を歌う度に、今も微笑みを浮かべたシスターの姿がよみがえってきます。