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ある日の山ゆき

小林 陽子

今日の心の糧イメージ

 昨日は、衝動的に山に入ってしまいました。黙想会に行く前に歯を治しておこうと予約していた歯科医院の帰り。「明神が岳登山口」の標識に誘われるようにして・・。イエスさまも「祈るために山にお入りになった」と聖書にありますし。

 ですが、何の用意もせず、スカートとブーツとハンドバックのままで。

 山道は雨のあとでぬかるみ、1時間近く登って岩場が多くなると、いかに滑らずに三点確保して歩を進めるかに全神経を集中させるので祈りどころではなくなりました。「そんな靴で登って大丈夫ですか」すれ違ったハイカーに言われました。ダメでもここで履きかえる靴はありません。

 「水切り」というところから山道はぐっと険しくなり、うつむいてひたすら登っていたのがとつぜん視界がひらけ、カルデラ火山の山なみが全貌を現し、それはすばらしい眺めでした。神様が呼んでくださっている!天国は近い!と生身に感じ取れる一瞬でした。

 それからは木立の間に見え隠れする山々を確かめたいのを我慢しながら一気に頂上まで、とはいかず、ぱっと開けた台地に立って、「頂上に着いた!」と思うとまだまだ先に道は続き・・というのを小一時間もくり返し、登り始めてから2時間近く、ようやくピークに達しました。やった!嬉しくてなりません。

 神様、ありがとうございます。

 お腹がすいてきたので、タンポポの花と葉をつまんで食べました。

 先ほどから服にパラパラとかかっていたヒョウが、音たてて降り出してきたので休憩もそこそこに下ります。帰りは同じ道ではつまらないと別の道を下り始めたのが失敗?高く暗い雑木林のうねうねとくねる木の根っこで足を取られながら3時間、ようやく下界のバス停に辿りつきました。でも何かがすっと抜けていました。