その先生に教えを受けたのは何年も前のことでしたので、あちこち手を尽くして調べ、やっと現住所がわかりました。
手紙を出してから2、3日すると返事が来ました。それはとても暖かい言葉で埋められていて、彼の手紙を読んで「思わず泣いた」と書いてありました。彼女は50年間も学校で教えていましたが、生徒のためにしたことについて、感謝の手紙を貰ったのは、初めてだというのです。
この返事は作家に非常な感銘を与えて、彼がこれまでに世話になりながら、感謝したことのない多くの人々のことを考えさせるようになりました。講演会の手はずを整えてくれた人、ものを書く資料を提供してくれた友人、彼の著書を批評してくれた人などに対して、彼は感謝の手紙を出すようになったのです。
手紙を書くたびに、彼は他人の善意についての認識を新たにしました。そして、自分の友だちがだんだん増えていることにも気付きました。みんな以前よりもっと熱心に彼を助けてくれるようでした。彼のゆき届いた感謝の便りを、みんな嬉しく思ったからにほかなりません。