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心新たに

小林 陽子

今日の心の糧イメージ

 Sさんが、電話をひんぱんにかけてくるようになったのは、ある修道院の黙想会で出会って以来のことです。

 海沿いの静かな山あいに佇むその修道院の黙想会に参加したのは6名だけ。そのなかの若い4、50代の女性達は、修道院入りが決まりました。

 「黙想会って何をする所なの?」

 Sさんは、その中では異分子のようにみえました。茶髪のソバージュ風のヘヤースタイル。つけまつげにマスカラの厚化粧。超ミニのスカートに派手なTシャツといういでたちです。

 日帰りでも、厳格な観想修道院の黙想会ですから、完全な沈黙を守ります。私にとって、あわただしい日常生活からすっぽり抜け出して神さまとだけ向き合う、貴重な時間、神さまとのデートの一日です。

 黙想会のプログラムも終了して、ティータイムからはお喋り自由になりました。

 なんとSさんは、つい一ヶ月前に洗礼を受けたばかり。修道院の存在も、黙想会の何たるかも知らないままに、教会の主任司祭から「行ってみてごらん」と背中を押されてきたというのです。でも、めっぽう明るく無邪気に喋るひとでしたから、静かなお茶会はたちまち賑やかな雰囲気になり、お互いすっかり打ちとけて会話が弾みました。別れ際にそれぞれメールアドレスや電話番号を交換しあって帰途につきました。

 病気で仕事を中断していたというSさんは、必死でハローワークに通っていました。ようやく保育士の仕事が決まったと報告してくれたSさんの声は弾んでいました。そして、思いがけないひとこと。「黙想会に行ってよかった!修道院って気持の良いところねー。大好きになっちゃった。み旨ならわたしも入りたい」と。今は、保育士として大切な子ども達のいのちを預かるのだとはりきっています。