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仕事と私

熊本 洋

今日の心の糧イメージ

 「仕事」という言葉は、耳で聞いても、目で見ても、すぐ理解できる易しい言葉です。それだけでなく、この言葉は、いろいろな響きと意味合いを持っていて、ずしんと心に何か意味深なものを感じさせる不思議な力をも持っています。たとえば、「仕事、仕事!」と言った叫びは、自分自らを叱咤・激励する場合に使えますし、仕事中怠慢な部下に叱責する場合にも使えます。

 幼いわが子に何かせがまれ、母親が「ママ、今、お仕事!」というと、わが子は、事情を理解したのか、不思議と一目置きます。大人の世界で「あなたのお仕事は?」と聞かれると、だれもが自分の社会的責任を感じてか、神妙に自分の職業について答えます。

 自分の仕事とは何か。それは、実際、考えてみると、非常に難しい問題です。ある人生目標を目指して、その実現のための、仮の仕事に精を出している人も少なくありません。職業の選択は、その時の社会・経済情勢に大きく支配されます。このため、"思うて、ならず、思わずしてなる"ということが、しばしばです。そして、親の強い願いもあって、自分の本来の望みを切り替え「家業を受け継ぐ」というケースも少なくありません。こういうことがあってこそ、伝統が保たれ、伝統が生かされるということになります。実業界のみならず、二代目、三代目という存在が、他の世界でもみられますが、その継承存続は、容易ではありません。私自身、父親は、無冠の帝王、新聞記者、図らずもサラリーマン家業を伝承、いつの間にか、私も同じ道を歩み、今日に至っていますが、これは、神からの呼びかけ、"VOCATION"、 天から与えられた使命だと受け止め、その使命達成に人生の意義を感じております。