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仕事と私

三宮 麻由子

今日の心の糧イメージ

 仕事に関して、私はいくつもの信じられない経験をしています。その一つが、絵本執筆です。

 4歳のころに視力を失った私は、絵本を読んだ記憶は頼りないかぎり。美しい絵が印刷されている雰囲気をぼんやりおぼえている程度で、繊細な線や色彩は想像するしかありません。その私に、絵を言葉で説明するからテキストを書いてほしいと誘ってくださったのは、ある幼児向け絵本雑誌を編集していた方でした。

 おっかなびっくりでしたが、この方に導いていただき、私は食事の音を体の内側から聞く本「おいしい おと」を刊行しました。その後、電車の音を再現した「でんしゃは うたう」、手触りをテーマにした「そうっと そうっと さわってみたの」と、時間をかけながらも絵本の数が増えてきたのです。

 ウグイスが鳴けるまでをテーマにした「うぐいす ほけきょ」は、読み聞かせると子どもたちが爆笑します。「でんしゃは うたう」を読み聞かせて育った息子さんが中学三年になり、「立派な鉄っちゃんに成長しました」という感想をくれたお母さんもいました。そんな経験を重ねながら、見えなくても心で語れば、絵本の文を書くことはできるのだと確信したのです。

 絵の説明を聞くときのポイントは、手を取って、ページのレイアウトごとイメージできる言葉で何度でも表現していただくこと。複数の方に説明していただき、視点を変えてイメージすることも大切です。こうして、私はある程度なら自分の文章にどんな絵を付けたいか、実際に付いた絵がどのように文章と融合しているのかを、思い浮かべられるようになりました。

 仕事には、無限の可能性があるのだとつくづく思います。ためらわずに扉を開けば、とてつもなく広い世界が待ち構えているのです。