おっかなびっくりでしたが、この方に導いていただき、私は食事の音を体の内側から聞く本「おいしい おと」を刊行しました。その後、電車の音を再現した「でんしゃは うたう」、手触りをテーマにした「そうっと そうっと さわってみたの」と、時間をかけながらも絵本の数が増えてきたのです。
ウグイスが鳴けるまでをテーマにした「うぐいす ほけきょ」は、読み聞かせると子どもたちが爆笑します。「でんしゃは うたう」を読み聞かせて育った息子さんが中学三年になり、「立派な鉄っちゃんに成長しました」という感想をくれたお母さんもいました。そんな経験を重ねながら、見えなくても心で語れば、絵本の文を書くことはできるのだと確信したのです。
絵の説明を聞くときのポイントは、手を取って、ページのレイアウトごとイメージできる言葉で何度でも表現していただくこと。複数の方に説明していただき、視点を変えてイメージすることも大切です。こうして、私はある程度なら自分の文章にどんな絵を付けたいか、実際に付いた絵がどのように文章と融合しているのかを、思い浮かべられるようになりました。
仕事には、無限の可能性があるのだとつくづく思います。ためらわずに扉を開けば、とてつもなく広い世界が待ち構えているのです。