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私とロザリオ

村田 佳代子

今日の心の糧イメージ

 私が洗礼のお祝いに頂いたロザリオは、とても良い香りがするバラの実を連ねたものでした。祈る毎に珠が磨かれ深いつやを発するようになり、もう50年近く私の祈りを受けとめています。私はこの大切なものをモティーフにして、ロザリオの祈りの三奥義を40歳になった頃、大作の油絵三枚に描きました。一作完成毎に当時のカトリック美術展に出品し、4年目、三作品を個展会場に並べて展示しました。会場に来て下さった神父様から、飾りたい場所があると云われたので、三作品をそっくりお捧げしました。

 やがて岩手県のカトリック大籠教会に展示したとの連絡を受け、現地を訪ねました。山の中腹に建つ普段は無人の閉ざされた巡廻教会で、絵は簡単に壁に下がっていました。私は試練を直感しました。作品に力が無ければ恐らく数年で、描き人知らずとして忘れさられてしまうでしょう。もし作品に込められた祈りが本物と解れば、永久に聖堂と共に在り、人々を引き寄せるに違いありません。それからロザリオの祈りを捧げる度に、三作品の安否は聖心にゆだねますと、心の中でつぶやくのでした。

 2013年の仙台教区のカレンダーに、三作品は教会の内陣風景として採用され、ある美術雑誌の最新号に「岩手県カトリック大籠教会『ロザリオの三奥義』収蔵25周年」というタイトルで、私の近年の画業が取り上げられました。ロザリオの祈りについての解説もあり、私がロザリオそのものを額縁のように絵の周囲に描いているので「この祈りを絵画で表現するには、十字架がどこに描かれているかが重要になるが、今までこのような作品はない。村田氏の信仰告白になっている。」と書かれています。聖霊の働きに感謝の祈りをと、思わずロザリオをたぐり寄せました。