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「根っこ」―生命の根っこ―

許 書寧

今日の心の糧イメージ

 私は仕事柄、よく長崎を訪れる。
 先日、友人に誘われ、長崎市の平和公園での「(きゅう)の日の座り込み」に初めて参加した。

 「9の日の座り込み」とは、原爆が投下された9日にちなんで、毎月平和祈念像の前で行われる平和活動である。被爆者や市民、高校生平和大使などが「核なき世界」を訴え、1979年3月に始まって以来ずっと続いている。

 私が参加した第519回目の座り込みには100人以上の人が集まった。関係者の講演と証言を聞きながら、無意識のうちに、最前列に座っている被爆者の方々に視線が引き寄せられた。ゼッケンを着けた彼らの背中は丸く、銀髪は真昼の太陽を浴びて輝いて見えた。その無言の後ろ姿を見つめ、私はふと自分との接点を思い出して心が震え、時間が止まったように感じた。

 十数年前、私は「原子雲(げんしぐも)の下に生きて」という本に出会った。
 長崎の山里(やまざと)小学校で被爆した4歳~12歳の子供たち37人の手記を、自らも被爆して病床に伏していた永井隆(ながいたかし)博士が編集し、世に送り出した作品である。偶然手に入れたその本を、電車の中で読み始め、気がつくと最寄り駅をとうに過ぎ、涙がこぼれていた。

 それまでの私にとって、長崎は教科書にある遠い異国の地名に過ぎなかった。ところが、見ず知らずの子供たちの赤裸々な手記に、私はすべての生命(いのち)に共通する無垢な尊さを見出し、魂が深く揺さぶられた。

 あの子供たちも、きっと「9の日の座り込み」の最前列にいた方々のように、静かな強さを持っているのだろう。子供たちの手記を通して、すべての生命に共通する根っこが、しっかりと存在していることを実感したからだ。

 生命の根っこに出会わせてくれた、この本と長崎での貴重な体験に、感謝が尽きない。