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「根っこ」―人間の生きる根っこはどこ?―

松浦 信行 神父

今日の心の糧イメージ

 少し前、ある商社の講演会に参加する機会がありました。講師は鉄鋼関係の子会社の社長さんでした。演題は興味深いもので、IT産業の盛んなこの時期、将来生き残るのはどの業種かというものでした。

 その講演後、質疑応答が行われましたが、宗教家の私は世間の状況に(うと)く、変な質問をしてしまいました。

 「そのように新しい分野を切り開こうとする人の、意欲はどのように育まれていくのでしょうか?」すると、その社長さんは、本当に真剣に受け止めてくださり、いろいろと説明した後で「その質問は私への宿題としてください。」というのです。

 そのとき私は、どうしてすぐに答えが出ないのだろうと疑問に思っていましたが、すぐにその件は忘れてしまっていました。

 それから三ヶ月ぐらいした後で、モンテッソーリ教育の専門家の講演会がありました。

 世のお母さん方は、やさしい子、思いやりのある子、自己実現を目指す子、協調性のある子になって欲しいと思っているが、ところが現実は学校の成績が良い子、能力を伸ばす子供になるようにと動いてしまいます。
 でも、意欲や、協調性、自己抑制力といったあまり数値化できないものの土台の上に、目に見える、目立つものが積み上がっていくことを、その専門家は指摘しました。

 つまり、数値化できない人間の能力が、その後の、人に認められる知識や学力などを作り出すというのです。
 彼によれば、運動能力も同様で、8才までの運動能力の進化が、それを土台として、その後の力や持続力の進化のもとに、大人としての力を生み出すというのです。

 「意欲がどのように生まれていくのか」という「人間の生きる根っこ」が確認できたような気持ちになりました。