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「根っこ」―信仰の根っこは父と子と―

今井 美沙子

今日の心の糧イメージ

 私の生まれ育った五島には、赤ちゃんがお母さんのお乳を飲む時、まず、「()() とば せんばよ」と言われたものだった。
 つまり、神様に感謝してから飲むものだと、物心もつかない赤ちゃんに教えたのである。「()()と」とは「父と子と」のことで、これを言って十字を切ることである。

 赤ちゃんは何もわからなくても、言われると小さい手を額に当てて、それからお乳を飲み始める。それが五島で生まれ育った人たちの、信仰の根っこだと私は思っている。

 何をするにも「()()と」から始まる。ご飯を食べるときはもちろん起きたとき、眠る前・・・書いていたらきりがないほど、私は十字を切る回数が多いと思う。

 その「()()と」であるが、ある日、「けいこ部屋」と呼んでいた教会学校の教え方様から注意を受けた。

 それは、フランスのルルドでマリア様のご出現を受けたベルナデッタの素晴らしい十字の切り方を、教え方様は見習うようにと言って、そのしぐさを教えてくれた。

 ゆっくりと心をこめて、天のお父さまと子どもであるイエスさまと、私たちを守ってくれている聖霊とに捧げる祈りであることを意識して、十字を切るのだと・・・。

 そそくさとした十字の切り方だと神さまは喜ばれない、と言われたので、それ以来、私たちはゆっくりと心をこめて十字を切るようになった。

 ベルナデッタの十字の切り方を見た当時の司教さまや神父様は、あまりの美しさに感動して涙したという。それもそのはず、マリアさまから直接教えていただいたしぐさだから・・・。

 私は今年、80歳になる。十字の切り方はまだ十分とは言えない。
 一生、修行である。