

私の住むアパートには、それぞれに庭がついていて、灌木が庭を囲むように植えてあります。夜明けから小鳥たちがさえずり始め、さまざまな小鳥が森のほうから飛んできて、灌木に止まり羽休めをしている時があります。
そのうちに、ピンポン玉のような丸いスズメが、毎日のように私の庭に飛んで来るようになりました。
ある朝、カーテンを開けて庭を眺めていたら、スズメが羽を水平に広げて真っ直ぐ、小さな飛行機のように私に向かって飛んできて、いつもの灌木に止まりました。
私は不意に涙が出そうになりました。そのスズメを見て、なぜか、進(すすむ)さんが戦時中特攻隊として南の海で死んだことを思い出したからです。
進さんは私の祖母の弟です。
進さんのことは祖母からよく聞かされていたし、家族、親戚、町の人が出征する進さんを囲んで日の丸の旗を持った壮行会の写真も見たことがあります。
次第にスズメは私に伝えたいことがあるのだと思うようになりました。
近いうちに、進さんの父、羽咋円了(はぐい えんりょう)が筆で和紙に書き、糸で綴じた、たった一冊だけの『進の一生』を読んでみようと思っています。
私は、毎日のように庭に飛んで来る同じスズメにススムチャンという名前をつけました。「ススムチャン」と呼ぶと、「ピィーヨ」と返事をしてくれることもあります。
スズメのススムチャンは、私に何を伝えに飛んで来るのでしょう。
進さんは戦争で命を落としました。スズメのススムチャンは、進さんから頼まれて、日々私に、平和な心で隣人を愛するように毎日飛んでくるのかも知れません。
聖書にある「隣人を自分のように愛しなさい」(マタイ22・39)ということなのでしょう。