

「マサナオ、一つ訊きたいことがあるんだけど...」。
イチローやノモ、タグチの評価をたっぷりしたあとで、トムはおもむろに身を乗り出して目を輝かせます。
「ニッポン・ハム・ファイターズ!これって何もの?
『ハムと闘う』プロの野球チームってことだよね。」
(そういえば、ファイアー・ファイターズは火と闘う人たち、消防士のことだったな。)
「球場で肉と戦うように、バットを振り回すのかい?」
いつものユーモアです。
高校の時プロの野球選手を目ざしたこともあり、野球に関する知識は半端でない。なかでも、ハムと闘う戦士たちが気がかりだったようです。
夏に日本に戻ったとき、ファイターズのFの文字つき野球帽を買って、トムのもとに届けます。しばらく自分の部屋に飾った後、故郷ウィスコンシンの父親のもとに殿堂入りします。家族でハム戦士の話題でひとしきり盛り上がる様子が目に浮かびます。
トムには息子の洗礼式で信仰上の父である
トムは2年前、学部長として活躍中に若くして亡くなります。闘病にあっても神への感謝を口にしました。友人らは今でもトムを「素晴らしい人」と懐かしがります。
ある集まりで、同郷の学生が何気なく、ある外国人学生を馬鹿にする言葉を発しました。トムは間髪を入れず、その友人の肩に手をおいて、そういう言葉を使うのはやめようぜ、と諭します。話の流れから、誰もが聞き流してしまうような状況でした。が、トムは違いました。
有名なマーティン・ルーサー・キング牧師は公民権運動を経て一番つらかったのは、敵の攻撃ではなく仲間の沈黙だったとふり返っています。
トム、一つ訊きたいことがあるんだけど...。どうやって、それができたのか、教えて。