

高校最後の2年間、私には個人のショーファー、お抱え運転手さんがついていました。クラスメートが学校まで歩いたり、黄色いバスに乗ったり、ポンコツ車を運転したりして通うなか、私は家のドライブウェイの端で待つ心地よい車に乗り込んだのです。
この送り迎えが始まったのは、ある朝二人の日課が鉢合わせしたときのことでした。ミスター・フォルサムは私の子どものときからずっと道向かいに住んでいた祖父のような存在で、朝刊とコーヒーを求めて町に出るところでした。私はというと、近くのバス停に向かって、ずっしりと重いバックパックを肩にかけて、歩きはじめたところでした。彼が窓ガラスを下げると、わざとぶっきらぼうに声をかけてきます。「そんな重い鞄だと、もっと背が縮んじゃうぞ! 乗りなさい。」
その朝から、とり決めをしたわけでもないのに、私を待っていてくれました。
この短い通学のあいだ、真剣な話などはありません。将来のことも聞かないし、忠告も一切しません。忘れていたことなどについて気兼ねなくおしゃべりしたのです。その道中で、私たちは自然に、互いに特別な人と感じるようになりました。この幸せな気持は、その後もずっと痕跡を残すこととなります。
高校卒業後私は地元を離れますが、10年ののち、最後の送迎に恵まれることになります。
フォルサムさんが私のショーファーとして結婚式の教会まで運転してくれたのです。これは特別な日で、日課としてではなく、ずっしりと重いバックパックもありません。それでも、昔の思いとかわりません。車の扉をあけると、わざと不機嫌な口振りを装って言うのです。「そんなドレスじゃすっころんじゃうだろ。早く乗って。」
私は乗り込みました。