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ほほえみ

村田 佳代子

今日の心の糧イメージ

 微かに笑顔になる状態がほほえみです。笑うというより優しい眼差しで口元を僅かにほころばせる自然な表情です。そう、ルネッサンスの画家ラファエルの描く聖母マリア様の表情です。

 日常生活を送る中で笑顔はとても大切です。人間関係の潤滑油と言えるでしょう。ただ笑顔は、自然な表情の変化の中で生まれるのでなければ、周囲に与える印象はかえって逆効果になってしまいます。馬鹿笑い、愛想笑い、せせら笑い、薄笑い、など下心が見え透く笑いがほとんどです。

 本当に面白くて大声で笑ってしまう大笑いや、楽しくてつい頬が緩んでしまうくすくす笑いなどもありますが、ほほえみはそんな笑いとは区別されます。ほほえみはもっと内面的で自然なもの、心の平安から浮かんでくる表情であり、素直な心の現れなのです。

 様々な事件や困難を潜り抜け、地球沸騰とまで言われる、経験したこともない自然の脅威にさらされている現代人の表情は、いつも時間に追われ、唯一頼りにするのは情報とばかり、スマホを握りしめ顔をこわばらせて駆け抜けていくという印象です。

 人は人を信頼することで目元が輝き口元がほころびます。安心のほほえみです。愛おしい感情で目は潤み、唇から笑みがこぼれます。愛情のほほえみです。感謝の感情からもほほえみは生まれます。

 ものを相手にしている時人間は無表情です。表情は人間同士が目を見交わしてこそ生まれるのです。とするなら、微笑みは神様に向き合い信頼を寄せ、どんな時も一人ではないという安心からこそ浮かぶ表情なのでしょう。

 まさに聖母マリア様の御生涯そのものを貫き通す表情です。