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真の強さ

岡野 絵里子

今日の心の糧イメージ

 コリントの信徒に向けたパウロの言葉を読む時、私は弱っていた心が勇気づけられ、回復していくのを感じる。

 「・・・主は、『私の恵みはあなたに十分である。力は弱さの中でこそ十分に発揮されるのだ』と言われました。だから、キリストの力が私の内に宿るように、むしろ大いに喜んで自分の弱さを誇りましょう」(Ⅱコリント12・9)。

 パウロほどの人でも、自分の弱さ、力の不足を省みていた。そして助けを求めて祈っていたのである。私のような不足だらけの者には、足りない分だけ、どれほどたくさんの恵みが与えられていることだろう。

 先日、打撃系格闘技の試合を観戦する機会があった。格闘技の選手など近寄り難い存在に思っていたが、試合後のインタビューでは、ノックアウト勝ちしたにもかかわらず、チャンピオンが勝ち誇らず、応援してくれた人々に感謝し、自分自身については反省点ばかり述べる、謙虚な態度だったので、すっかり感心してしまった。

 私たちは努力するほど自分の限界を知る。挑戦するほど自分の卑小さを悟る。チャンピオンも勝てない時期を経験したのだそうだ。だがそこから自分の弱点を知り、乗り越えて来たのだという。

 人としての強さの一つは、自身の弱さを知って、そこから立ち上がれる力ではないかと思う。負けたことのない選手より、挫折から立ち直った選手の方を応援したくなるのは、私たちも、心折れてはまた立ち上がる日々を過ごしているからだ。

 自身を知れば、他者の弱さにも寛大になれる。他者を思いやり尊重していこうと心に決めると、何かに強められる気がするのは不思議だ。

 恵みだろうか。そう思うだけで、もう一度勇気づけられる。