イエス・キリストは、わずか3年の間、精力的に町や村を巡り、「神の国とはどのようなものか」を人々に述べ伝えました。さらに、病を癒やし、死者を生き返らせるなどの奇跡によってご自分の言葉が真実であることを示されました。
イエスは愛情にあふれておられましたし、その口から出る力ある言葉は人々の心をつかみました。評判を聞いて、外国の人もイエスに近づくことがありました。
マタイ福音15章には、幼い娘が汚れた霊に取り憑かれたので、悪霊を追い出してほしいとイエスに頼む異国の女性が登場します(15・21~28)。
イエスはこう言われました。「子どもたちのパンを取って小犬にやってはいけない」(15・26)。
当時のユダヤ人は、他国の人を「神を知らない人だ」と考えていました。イエスが言った「子どもたち」とはユダヤ人を指し、「小犬」とは他国の人のことでした。二千年前のことです。この表現は現代の物差しで測ることは出来ない部分でしょう。
ところが彼女はこう言いました。「主よ、ごもっともです。しかし、小犬も主人の食卓から落ちるパンくずはいただくのです」(15・27)。
イエスは驚き、感動しました。
「あなたの信仰は立派だ。あなたの願い通りになるように」(15・28)。母の深い愛情が、イエスの心を揺さぶったのです。
彼女はひどい言葉だと感じたでしょう。しかし、そんなことはものともせずにひたすら娘を思ったのです。
「真の強さ」は、見下げられている人、か弱く頼りにならないように見える人たちが、愛情に駆られて我を忘れ、自分より遙かに大きな相手に捨て身で向かうとき、その輝きが現れます。神さまは「小さくされた人々」と共におられる方なので、彼らの中に真に生きてその人を強めるからです。