「旅立ちの時」という映画がありました。1988年制作のアメリカ映画です。
新聞の批評を読んで、どうしても見なければと思って、東京の三軒茶屋というところにある小さな映画館に行きました。
その映画は、若い夫婦がベトナム戦争に反対して、間違って人を殺めてしまい、子供二人を連れてアメリカ中を逃げ回る話です。彼らは子供と一緒でなければ生きられないと思っています。
長男は、ピアノが好きで、紙に鍵盤を書いたもので練習しています。
その子が高校生になった時、母親はこっそりと自分の父親に会いに行きます。彼女の家は大金持ちでした。
父親は、娘が自分たちブルジョワに対して、ひどい言葉を残して出て行ったことで、その頃もまだ傷ついていました。
彼女は、自分の意に反して謝り、息子がピアノをできるように助けてほしいと頼むのです。父親は孫の面倒を見ようとしてくれるのですが、家族がその街を出て行く時に、少年は、自分も両親と一緒に逃亡生活を続けることを選ぶのです。
私にはあの家族がまるで自分の家族のような気がしました。
私の父は、彫刻家で、長崎の二十六聖人の記念像などを作っていましたが、子供が6人もいるのですから生活は本当に大変でした。私は長女でしたので、両親の大変さをよくわかっていました。父がいい仕事をしているとは思っていましたが、それでも大変でした。
この映画を見て、私たちは、警察に追われているわけではないけれど、とても他人事には思えませんでした。この映画を見た頃、私たちの生活はもうかなり良くなっていましたし、両親がまだ生きているということを本当に感謝し、母にもそう言いました。弟妹たちにもその映画を見るようにと言いました。
忘れられない映画なのです。