▲をクリックすると音声で聞こえます。

大きな壁

森田 直樹 神父

今日の心の糧イメージ

 人生の歩みの中では、時々、目の前に大きな壁が立ちふさがることがあります。今までのやり方では通用しない手強い壁です。時に、あきらめかけて落ち込んでしまったり、壁に挑むのを投げ出したくなったりとその前に立ち尽くすしかないこともあります。

 それでも、一歩一歩壁に向かっていくしかない、のでしょう。自分の力だけではどうしようもない壁ではありますが、自ら立ち向かうことなしに壁を乗り越えることはできません。

 イエスという方は、その生涯の最後に、十字架という大きな壁を迎えました。十字架を背負うことが必然となった時に、彼は、父である神さまにこう祈りました。「アッバ、父よ、あなたは何でもおできになります。この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしが願うことではなく、御心に適うことが行われますように。」(マルコ14・36)

 十字架の苦しみを「杯」と表現して、その苦しみが取り去られるように、とイエスさまは素直に祈られました。しかしながら、イエスさまは、神さまの御心が行われるように、とも祈られました。これは、注目すべき点ではないかと思います。

 大きな壁を目の前にして、神さまの御心が行われるように、とはなかなか祈りにくいものです。しかし、この祈りが大きな壁を乗り越えていく大切なポイントなのでしょう。自分自身の力ではどうしようもない時、神さまにすべてをゆだねて、神さまの御心を受け入れていくことしかできないのかもしれません。

 神さまの御心が行われるようにと祈り、すべてを神さまの手にゆだねた時、新しい道が拓かれていきます。

 イエスさまは、十字架を引き受け、十字架上でその命を捧げられました。その結果、「復活」という出来事が起こるのです。