ミシガン大学病院でボランティア研修をしていた25年前のこと。
大学病院主催のボランティア表彰式に招かれた。経歴が長い人とその家族をフルコースでもてなす、年に1度の晩餐会だ。研修生の私など参加資格はないのだがボランティア課の方の特別な計らいだった。
大広間のテーブルは晴着姿の受賞者と家族で満席。戸惑う私は舞台前のテーブルに案内され、赤い上着のおばあちゃんのご家族と一緒になった。
事務長の感謝の挨拶の後、売店で25年間働いている老夫妻に表彰状と花束が授与された。巨大な州立大学病院の売店がボランティアで運営されているとは新鮮な驚きである。病院生活が楽しめる洒落た見舞い品やお菓子などが揃っていて、日本の公立病院にはない暖かい雰囲気で、私も時々覗いていた。
続いて20年~30年、病院各課で奉仕している数組の老夫婦が表彰され、最後に今も現役で奉仕活動をしている92歳の方が呼ばれた。それは何と同じテーブルの真っ赤な上着の老婦人だった。大拍手の中、杖を片手に壇上に立った彼女は、「人に奉仕することで、私は今も元気を頂いています」と晴れやかに挨拶した。テーブルでのご家族との会話から彼女の日常が窺えた。自由な独立を好み、今も一人暮らしだが日常生活は近所に住む娘さんや友人が世話をしている様子。彼女は「奉仕する人」であると同時に「奉仕される人」なのだ。
子ども病棟でも、交通事故で車いすになった青年が週に1度折り紙で子どもたちを楽しませていたっけ。
高齢者から障害者まで誰もが社会との関わりを求め、進んで他のために無償で働く事を誇りとし、周りもそれを称えて助け合っている。そんな愛に満ちた社会の一面を垣間見た気がした体験だった。