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分かちあう

岡野 絵里子

今日の心の糧イメージ

 例えば聖書の或る1章や1節を読んだ時の新しい気づきや喜び。それからその言葉がどのように自分の中に降りて来て、小さな聖域を作り、そこから語りかけてくるか。

 そんな経験を「分かち合い」できたらと思う。

 信頼できる人たちと、心のありのままを共有する時間は、人を不安から解放し、生きる力を湧き出させるに違いない。

 そんなことを考えていて、思い出したことがあった。

 若い頃、アメリカのペンシルベニア州で暮らしていたことがある。

 町内に、ご夫君が寝たきりになり、介護に奮闘している女性がいた。ご両親も高齢で配慮が必要であり、彼女の苦労とストレスは大変なものだったらしい。それで近所に住む人や友人たちが夕食の後の時間帯に、彼女を時々見舞って、愚痴を聞いてあげていた。庭に続くウッドデッキにアウトドア用の椅子とテーブルを出し、皆で座ってコーラやジュースを飲みながら、「おおー」とか、「ふうむ」と言ってひたすら聴くのである。たまに励ましたりするが、上から目線のアドバイスなどしない。彼女が叫んだり、泣いたりしながら話す時は、もう何を言っているのかわからなかったが、私も頷いて聴いていた。

 1時間ほど経つと、皆は立ち上がり、女性も笑顔になって皆にお礼を言い、家の中に戻っていった。彼女はすっかり気持ちが軽くなって、またしばらくの間を頑張る元気が湧いたように見えた。友人たちは心を込めて聴くことで、彼女の苦労を分かち持ってくれたのである。

 こんな友人たちの思いやりが、今私たちが心を傾けている「分かち合い」の始まりの姿だったのかもしれない。私たちは、お互いの心の支え方を少しずつ学んできたのである。