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手助け

片柳 弘史 神父

今日の心の糧イメージ

 人を助けるのは好きだが、助けてもらうのは苦手だという人がいる。

 人を助けるときは、「自分は誰かの役に立つ」と思って自分自身の価値を確かめられるが、人から助けてもらうときは、「自分は人から助けてもらわなければ生きられない人間だ」と思って、自分がみじめに思えてくる。だから、人を助けるのはいいが、できれば人から助けてもらうことは避けたい。どうも、そのような心理が働いているようだ。

 そんなことをいっているわたしも、人から助けてもらうのは苦手だ。「他人に迷惑をかけたくない」といえば聞こえはいいが、「人から助けてもらうのはかっこ悪い」と思っている自分が心のどこかにいるのも事実だ。「人の役に立つ人間には価値があり、役に立たない人間には価値がない」という競争社会の価値観が、どうやら心の奥深くにまでしみこんでしまっているらしい。

 障害者や高齢者を差別して、「役に立たない人間には価値がない」などという人がいれば、誰もが「そんな考え方は間違っている」というだろう。しかし、自分自身のことになると、この考え方を貫くのが難しくなる。役に立たない自分、助けてもらわなければ生きられない自分を、つい「みじめ」と感じてしまうのだ。
 しかし、そんな風に考える必要はまったくない。なぜなら、人間は、互いに助け合わずには生きられない生き物だからだ。生まれてから死ぬまで、誰からも助けてもらわずに生きられる人間など一人もいない。ときには人を助け、ときには人から助けられながら、互いの存在に感謝して生きていく。それを、弱さとして否定するのではなく、人間の自然な姿として素直に認めることができたらと思う。