▲をクリックすると音声で聞こえます。

光と影

村田 佳代子

今日の心の糧イメージ

 アトリエは家の北側にあります。吹き抜けの天井近くの北側に大きな窓があり光が入りますが、その日の天候に沿った一定の明るさの光です。

 デッサンには、石膏でできた幾何形体から始めて、人体や肖像などの石膏像へと進む場合と、丸や四角の幾何形体の素材を、ガラスや陶器、木や紙と様々な質感に変化させ組み合わせて、静物デッサンを行うなど、様々な学び方があります。

 鉛筆か木炭をつかう場合モノトーンなので、モティーフを立体的に捉えて描写するためには光と影の観察が何よりも大切というわけで、このため光が差してくる方向は一定でなければなりませんし、影の形も変化してはならないのです。影を観察すると、台に接している部分が一番濃くなり、離れるにつれ次第に影は薄れていきます。一方光が当たる部分は紙の白を活かした表現を工夫することが必要です。

 絵画は、平面という観念から作品に光と影が表現され、奥行き感が出せるようになったのは、15世紀ルネサンス期からです。キャンバスや壁面という平面に、立体的な三次元の空間を創出させるのが画家の仕事となったのです。

 この考え方は400年以上続き、現在も写実主義として残っていますが19世紀末、ポスト印象派と呼ばれるゴッホやゴーギャン、ルドンといった画家達は、絵画の役割を目に見えない心の内部を表現することに大きく変化させました。これによって光と影の役割も現実の空間の観察とは異なる作者の内面的な喜びや苦悩の表現に活用され抽象画を読み解く鍵にもなりました。

 私も殉教者を描き、聖書のみ言葉を表現するとき、自然に神様からの「みひかり」を感じて作品に活かす努力をします。日常の光と影に聖霊の働きを感じています。