フィリピンのマニラにある、サン・アグスティン教会。その聖堂の天井には、見事な彫刻が彫られている...と思ったら、なんと実は、彫刻のように見える絵画でした。言われてもわからないほど巧みに陰影を描くことによって、目の錯覚で、彫り込まれたもののように見えるのです。"光あるところに影あり"という無意識のうちに意識されているこの世の理をうまく利用した芸術作品です。
絵画以外でも、影には大事な役割があります。影があるから現実感や距離感が出てきます。影がなければ、歩くときにいろんなものにぶつかってしまうかもしれません。
それに、蝉たちが合唱する猛暑日に外を歩くときには、木陰を見つけるとほっとします。
どこへ行っても光に影はつきものですが、わたしたちの心の中では少し様子が違うように思います。ある友人は、毎朝家の前を通る小学生の子から、いつも元気いっぱいの「おはようございます!」をプレゼントされるそうです。その声を聞くとすごく元気をもらって、疲れていても「よし、今日もがんばろう!」と、みるみるやる気が湧いてくるんだと話してくれました。
子どもたちの輝く瞳であいさつされると、心の内に眩い光が差すような思いがします。その光は影をつくらず、かえって影を小さくします。
子どもたちが描く絵には、ほとんど影がありません。だからでしょうか、写実的には見えませんが、子どもたちの心に満ちあふれる光をよくあらわしているようです。
「闇もあなたに比べれば闇とは言えない。
夜も昼も共に光を放ち
闇も、光も、変わるところがない。」 詩編の言葉です。(139・12)
一人ひとりの内にもうすでに輝いている光に、もっともっと照らされますように。