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自然への感謝

シスター 山本 久美子

今日の心の糧イメージ

 私は、田園風景が広がる、海に近い田舎町で育ち、自然環境に囲まれて、採れたての野菜や海の幸に恵まれました。故郷を離れるまで、買い物や交通の便が多少悪くとも、それが普通で、特に不自由さも感じませんでした。

 春は田植え、帰ってきたツバメが家の玄関に巣を作って巣立ち、それが終わるとカエルの大合唱。梅雨明けには、カエルがセミに変わり、夏を実感します。窓を開けると、海の波の音が聞こえました。近年のような熱帯夜に悩まされることもなく、エアコンがなくても、潮風がたまらなく気持ち良かったのを思い出します。やがて、秋の虫の音が心を和ませてくれ、稲が成長し、稲穂を実らせます。その頃は、よくイナゴが家の中にまで入って来て、びっくりしたものです。冬、田園はひと時の休み期間に入りますが、私たちも一緒に静かな季節を過ごしました。

 まさに自然との共存を絵に描いたような暮らしでした。

 長い歳月が経ち、自宅の隣近所にも多くの住宅が建ち並び、子供の頃に親しんだ風景は変わってしまい、生活ぶりも便利になりました。海が近いため、地球温暖化によって深刻化している自然災害による被害も心配です。

 昔がなつかしいと感じる一方で、便利さや快適さを追求してきた現代の生活にどっぷり浸かった自分自身にも気づかされます。ふり返ると、育った環境の「ありがたさ」を、本来は「めったにない」貴重なこととして感謝せずにはいられません。

 自然は、何も言わず、私たち人間の命、生活を支え続けています。

 今、私たち自身は、*「後に続く人々のため、私たちは一体どのような世界を残していきたいのでしょうか」という呼びかけが突きつけられています。

          *参考(教皇回勅「ラウダー ト・シ」160)