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人との絆

シスター 萩原 久美子

今日の心の糧イメージ

 ここ最近、「絆」という言葉に触れることが多くなったなと感じます。

 改めて「絆」という漢字の意味を調べてみると、「絆」という漢字には「きずな」という読み方と「ほだし」という読み方があることを初めて知りました。皆さんはご存じだったでしょうか。

 「きずな」と聞くと、人と人との温かい思いやりや優しさをイメージし、ポジティブな響きを感じますが、「ほだし」の意味を調べると、人の心や行動を縛るもの、自由を妨げるものとあり、一気にネガティブな気持ちになってしまいます。

 同じ漢字なのに、読み方次第で受ける感じがこうも変わってくるのかと思っていたら、ふと、初めて寮生活を始めた時のことを思い出しました。

 中学3年生の時、シスターになりたいという思いから実家を離れ、修道会の志願院で多くの仲間とともに寮生活をはじめました。新しい生活に慣れるまでは、家族や旧友からの手紙や電話に「あぁ、家族や友達のきずなっていいなぁ」と思ったものでした。

 同じ心配のことばでも、両親や兄弟と毎日一緒に過ごしていた時は「ほだし」にしか感じられず鬱陶しく思っていたことばが、離れて生活することで私を支える「きずな」として感じられるようになりました。家族と離れて過ごすことで、そこに愛情を感じることができたのかもしれません。

 「愛はすべてを完成させるきずなです」(コロサイ 3・14)

 新年度が始まって一か月。新しい学校生活や職場のなかで交わされる"ことば"が、時には「ほだし」にしか感じられず、窮屈に思うこともあるかもしれません。でもそこに「愛」を感じるとき、「ほだし」の中に「きずな」を見出せるのかもしれません。