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旅立ち

堀 妙子

今日の心の糧イメージ

 これは新しい道へと旅立つ青少年へのためのはなむけの言葉です。

 「青少年は夢を見ます。生きがいを追いかけて人生を過ごしていることがあります。どうかその時、立ち止まって生きがいと実生活が一致しているかどうか確かめてください。」

 私は長年の夢を実現した絵本塾を閉じることになりました。これは新しい旅立ちです。絵本塾の長い準備期間を経て、1年半、取り組んで来ましたが、私自身の生きがいと生活者としての部分が一致しなくなりました。生きがいと実生活が一致しなくなった場合、生きがいを手放し、食い扶持を稼ぐというのは人間としての義務です。

 絵本塾を始めたのは、1年半前です。およそ4年前、ときどき、私のアパートに遊びに来るペルーやメキシコからの移民の女の子がいました。

 ペルーからの移民の女の子は2段ベットの上で朝、目覚めると、窓ガラスから夜明けの青い空が見えて、綺麗だという話をしてくれました。その子が毎朝眺める青い空の話を聞いていると、彼女は心の奥底にある青い色を見つめているような気がしました。

 絵本塾には知人から南米のスペイン語の絵本がたくさん寄贈され、日本語の絵本もたくさん集まりました。この小さな絵本塾で探りたいと思ったことは、南米からの移民の子どもたちのうちに眠っているたくさんの文化が混在したルーツを紐解いてほしいということです。

 いつの日にか、私ではないかもしれないけれど、新しく出会った若者が、絵本という紙の文化と、映像の文化にどう折り合いをつけるかを探ってほしいと願っています。女の子が夜明けのガラス窓から見たという青い空が、私の心の中で不思議な輝きを放ち、明滅しています。