人生にとって大切なこととは、ひとによって皆、違うと思いますが、健康、財産、家族、学歴、教養、職業、人間関係などを軽視する人はいないでしょう。
けれども、人生の目的が何かを考えると、私は大学で「人間学」という科目を教えてきたから言うわけではありませんが、それは自己実現だと思います。多くの日本人は、死んだら無になると思っていますが、決してそうではありません。
私がキリスト教徒だからということではありませんが、旧約聖書の冒頭にある「創世記」には、神は人を「神にかたどって創造された」(1・27)とあります。それを文字通り信じるかどうかは別にして、人の魂が不滅なことは、多くの日本人も認めていると思います。そうでなければ、なぜ、お墓参りなどをするのでしょうか。
ですから、自己実現というのは、人が如何にして真の自己を知り、それを成長させていくかということが、人生の一番大切なことだということを教えている言葉なのです。それにはまず、自分の個性を知らなければなりません。
その一端として、私がかつて大学の就職部長をしていた時に、学生たちに強調したことを申し上げたいと思います。
それは、自分は何が好きで、何が出来て、何がやりたいかをよく知ることです。適性と言ったらいいでしょう。就職の場合は仕事ですが、人生なら、何が好きで、何が出来て何がしたいかを明確に自覚するとき、人生における成功や幸福はほぼ達成されたと言えます。
私の場合は、教えることが好きだったので、学校の教師になり、長年続けました。そして、神父も好きなので、今も続いているのでしょう。