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大切なこと

片柳 弘史 神父

今日の心の糧イメージ

 人間が幸せに生きていくために一番大切なもの、それは謙虚さだろう。謙虚な心で生きる人は、どんな状況に置かれてもその状況に感謝し、そこで出会う人たちと幸せに生きられる。

 たとえば、「自分はもっといい会社に入れるはずだったのに、こんな会社にしか入れなかった」と思い、自分は不幸だと感じている人がいたとしよう。その人の大きな間違いは、「自分は有能で、もっといい会社に入れるはずだった」と思い込んでいることだ。自分の実力を謙虚に評価し、「仕事が見つかっただけでもよかった」と思えれば、不幸はたちまち消え、心は幸せに満たされるだろう。不満をいうのを止め、その場所で自分の実力を発揮すれば、やがて自分が思った通りの評価が与えられることもあるかもしれない。しかし、不満ばかりいっていて何もしないなら、決してよいことはないだろう。

 あるいはたとえば、新しい職場の同僚や上司が、自分の期待していた通りではなかった。「なぜ、こんな人たちと一緒に働かなければならないのだろう」と思い、自分は不幸だと感じている人がいたとしよう。その人の大きな間違いは、周りの人たちを見下していることだ。自分自身を謙虚に評価し、「自分にもいたらない点がたくさんある。互いの欠点を補い合い、よいところを出しあって、よりよい成果を出していこう」と思えれば、不幸はたちまち消え、心は幸せに満たされるだろう。

 わたしが知る限り、ほとんどの不幸は傲慢さから生まれる。自分が不幸だと思ったときは、「いま自分は思い上がっていないだろうか」と自分に問うのがよいだろう。わたし自身、もう一度そのことを自分に問いながら新しい年度を始めたいと思う。