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大切なこと

松尾 太 神父

今日の心の糧イメージ

 小さな貝殻が、机の上においてあります。小指の爪よりも小さな貝殻です。小さいけれども、輝くとても綺麗な貝殻です。その貝殻は、ある日、奉仕している小学校の一人の子どもが「とっても綺麗な貝殻を見つけたよ!」と言ってプレゼントしてくれたものです。誕生日でもなく、クリスマスでもなく、何の変哲もない普通の日でした。でも、そのまごころこもったプレゼントのおかげで、その日は特別な日になりました。そして、その小さな貝殻も、何かかけがえのないものとなり、捨てるに捨てられなくなってしまいました。

 ひょっとすると、皆さんにも、新しい季節を迎えて手離さなければと思いつつ、なかなか捨てられないものがあるかもしれません。手紙、メモ、落ち葉、押し花、どんぐりや松ぼっくり、書き留めたノート、皆にもらった寄せ書き、そして小さな貝殻。いや、もう捨てたほうがいいよという声も、どこからともなく聞こえてくるようです。

 修道者として、もっとすっきりさっぱり生きていたいと望みながらも、なかなか手放せないものがあります。それはたぶん、どうしようもないガラクタ同然のモノたちです。けれども、どうしようもなく大切なものたちです。モノとしては、ほとんど何の役にも立ちません。わかっています。きっとハミガキ粉や重曹のほうが、歯や湯呑みに輝きをあたえるためにずっと有能です。けれども、これらのものにこめられたおもいは、いつも心を奮い立たせ生き生きと輝かせてくれるのです。

 「主はわたしを青草の原に休ませ/憩いの水のほとりに伴い/魂を生き返らせてくださる」(詩編23・2~3)

 青草のように、憩いの水のように、主なる神が与えたプレゼントのように思うのです。