作家・遠藤周作の読者の集いで20年以上前に出会った先輩Kさんと聖書の読書会を始めてから1年半が過ぎました。
同居するお母様が病気で長期入院して以来、彼は一人暮らしになりました。定年を迎えてからは家に引きこもる日が増え、気持が滅入ることを打ち明けてくれたことから、私は彼に読書会を提案しました。
その後、若き作家の青年も加わり、60代のKさん、40代の私、30代のT君と世代の異なる3人が、聖書を通じて豊かな語らいを重ねています。
Kさんは読書会の後の分かち合いで、「母が世を去った後、独りきりになって生きていくことを想像すると、不安でならないのです・・」と語っていましたが、昨年夏、お母様は96歳で天寿を全うされました。
彼から連絡をいただいた私は、〈早めに会ったほうがいい〉と直観したため、葬儀を終えた翌週に会う約束をしました。
その夜ばかりは、彼は好きなお酒を飲みながら、母親を見送った心情や文学談義などを大いに語り、帰る頃には少し、心が軽くなったように感じられました。
2ヶ月後、久々に3人で集い、聖書の読書会を行いました。最初にお母様を偲んで黙祷を捧げた後、「ルカによる福音書」の19章を分かち合いました。町を訪れたイエスを一目でも見たい――と願い木に登ったザアカイの姿をイエスが見つける場面から、「信仰とは神を信頼し、縋るものである」というメッセージを共有しました。
読書会の後は食事会を開き、彼に笑顔が見え始めました。人は深く悩む時、本当に信頼できる人を一人でもみつけ、語ることで心が少し楽になることがあるのでしょう。
次の季節の扉をそっと開いた彼との関わりを、これからも私は大切にしたいと思っています。