分断、紛争、そして戦争――これらは、いまだに世界を覆っています。真の平和の実現――はたしてこれは、単なる夢物語なのでしょうか。
一人ひとりのいのちが、その人のいのちとして大切にされること――そこに、真の平和の原点はあります。平和――それは確かに、恵みとして与えられるものですが、同時にまた、私たちが築いていくべきものでもあります。真の平和とは、ただ戦争がないことでも、国家間が危うい緊張関係の中にあることでもありません。そこにはもっと、積極的な意味があります。
「あなたがたに平和があるように」――(参ヨハネ20・19、21、26)と、復活の後イエスは、恐れの中にあった弟子たちに語りました。この「平和」の背後には、「シャローム」という言葉が響いている、とも言われます。そしてその意味は「神が共にいること。」イエスは「平和の君」(参 イザヤ9・5)と呼ばれ、生前「恐れるな」と人々に語っていました。
平和を築く――そのために、私たちはどこから始めたらいいのでしょうか。それはまず、私たち一人ひとりの心の中からではないか、とそう思います。それができたら、家庭に、地域に、国に、そして世界に、と徐々に半径を大きくしていきます。
「平和とは秩序の静けさ」――そう語ったのは、アウグスティヌス。マザー・テレサは、生前、出会う人々にメモを渡していたそうです。そこには、次のような言葉がしたためられていました――「沈黙の実りは祈り、祈りの実りは信仰、信仰の実りは愛、愛の実りは奉仕、奉仕の実りは平和。」沈黙とは、自分の心に語りかけられる神の声を聴くこと。それによって、平和への扉は開かれ、私たちは歩んで行けます。