コロナ禍と膝の痛みで休んでいた、近くの公園の散歩を久しぶりにした日、雑草に紛れて咲く青紫の小さい花を見つけた。初めて見る花で、「私を見て!」と言わんばかりの凛とした咲きぶりに惹かれて、写真を撮った。
デイケアー仲間で花好きの方たちが「まあ!きれい!」と喜んだが、誰も名前を知らない。施設の花図鑑で「ツル日日草」と分かった。名の通り蔓を伸ばして繁殖している。翌週、道にはみ出た蔓を少し取って差し上げたら、カラーの株を頂いた。おばあちゃんの私たちが小さな花の輝きに感動し、名前を知って会話も弾み、より親しくなった。
花はその植物の晴れ姿。それぞれ名前を持っている。その花を最初に見つけて名付けた人の感動と誇りはいかばかりか。
今放送中のNHK朝のテレビ小説「らんまん」の主人公は、日本の植物学の父と言われる牧野富太郎博士。子供の頃から野の花が大好きで、その純な植物への情熱により、学校も中退し、日本中の山野を巡って新しい植物を見つけては標本を作成、94歳の生涯で1500種類もの植物に学名を与え、日本植物大図鑑を刊行された。
数年前、私は彼と同郷のよしみで故郷高知市の牧野植物園を訪れ、南国の豊かな自然に心身共に癒された。広大な園内の全ての樹や道端の草花にも名札がついていた。
「らんまん」の中での牧野さんの言葉。「植物も人間も全てのいのちは根で繋がって互いに支え合って生きている、というより生かされている個々独自の貴重な存在なのである。」
彼は人間関係でも壁がなかった。植物好きなら、権威ある学者にも子供にも同等にその魅力を熱心に話されたという。彼が愛した野の花のように、私も無心に天を仰いで光を受け、心輝かせて生きてゆきたい。
*このお話は9月はじめにラジオ放送したものです。