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活かしあう

古橋 昌尚

今日の心の糧イメージ

 イシドロ・リバス神父は、著書「孤独を生き抜く」の中で、現代の日本では多くの人々が孤独に悩んでいると訴えます。日本人は感受性が豊か、心が繊細で、その分人間関係に悩み、孤独に苦しむことも多いと言います。さらにリバス師はその人間論を展開して言います。

 ~~ 人は本来的にほかの人々に向けて創られ、人との関わりに招かれています。私たちが寂しさや孤独を感じるのも、そこに本来あるはずのもの、即ち人との交わりが欠けているからです。

 独りぼっちで寂しい孤独があるとしたら、それは逆説的にも、充実した孤独が足りないからです。神に憩い、そのなかで自分としっかり向きあった人は、一人であっても寂しくなく、むしろ充実しています。

 人は独りでは幸せになることもできないし、独りではなりたい自分にもなれない。人はもともと互いに頼り、支え、活かしあいながら生きるのである~~ と。

 私は若い頃、東南アジアの国に1年ほど住んだことがあり、家族や地域、人々の間の近さを身に沁みて感じました。なによりも人々に生き生きした興味を示し積極的にかかわる時間と、生活の余裕がありました。姉妹兄弟の数も多く、上の子は幼い子の世話をすることが、家庭内の約束事となっています。

 現地に溶け込むうちに、助け支えあい、それによって互いを活かしあうことの優れた点に気づかされました。いずれの子どもたちも自分が必要とされていると感じ、家庭でも生きる価値を実感し、人への思いやりも自然と育っていきます。

 私たちの富と忙しさがかえって人情を鈍らせ、互いの支えあい、活かしあいを消してしまうことがあるとしたら、寂しいです。

 神よ、どうか私たちを導いてください。