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活かしあう

岡野 絵里子

今日の心の糧イメージ

 世界人口はついに80億人を突破したそうである。これだけの人間が地球上にいるのかと、人見知りの私などは、想像しただけで身がすくむ。

 現代社会における「生きづらさ」が、初めて指摘され考えられるようになったのは20年前だっただろうか。その後、コロナ禍を経て、社会も変わり、職場に集まらなくてもリモートワークで仕事ができるなど、人々の心身の負担は少し減ったかもしれない。が、生きづらさはなかなか解消されないようである。不況のせいで生活しづらい、という経済的な問題も大きいが、学校や職場などの集団に適応しにくく、生きづらいという人々の悩みも小さくない。

 どんな人にとっても生きづらくない、すなわち生きやすい社会を作る方法を私たちは探し続けているのだが、この現代社会の課題に、不思議にも、二千年も前の聖書の言葉が助けになるのである。

 「隣人を自分のように愛しなさい」。(マタイ22・39)

 この言葉は私にこう伝えてくるように思える。「あなたたちは自分を愛していますね、それはよいことです。自分を大事にしなさい。但し、身近にいる人々のことも愛し、大事にしていきなさい、自分と同じように。自分を知り受け入れて、よき能力があったら、自分のために、そして出会った人々のために使いなさい」。

 自分と身近な人でよいのか、それならできそうだと安堵する時、この聖書の言葉は、心を通る道の彼方に暖かく灯る。だが実行はとても難しい。自分に不利益を与える人も敵も身近にいるからである。自分自身も思うようにならない。心を通る道は険しく遠かった。

 でも灯は燃えている。それなら行かなければならない。