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活かしあう

服部 剛

今日の心の糧イメージ

 私が詩を朗読する活動を始めて、今年で25年になります。主にカフェやライブハウスでイベントを主宰したり、催しに出演したりしています。その中で大切な想い出となっているのは、私が5年近く開催していた『笑いと涙のぽえとりー劇場』という朗読会です。私が司会をし、人々が自由に参加できる場を毎月、持っていました。

 詩の朗読、ポエトリーリーディングは密かなカルチャーとして、趣向を凝らしたさまざまなイベントが行われています。私の朗読会では、参加者が自分らしい詩と朗読を通して互いに分かち合うことで心が充電され、皆が日常へと戻っていく場を目指していました。

いわばミサに与る人々が世に派遣されてゆくような願いを胸に秘めて、私は催していました。共に豊かな時間を織り成せたことを、今も実感しています。

 他に強く心に残る催しとして『布団の中のアーティスト』という、生きにくさを抱える人たちの集うイベントがあります。主宰者の青年Tさんは長い間、引きこもっていた体験の持ち主です。同じような悩みや課題のある人々に呼びかけ、活動は10年近く続いています。参加者は特技を生かし自分を発信、絵の展示や楽器の演奏なども行われます。

 Tさん自身、ふとしたことでギターを始め、弾き語りをすることで外の世界に出ていくきっかけを得たそうです。出会う人々の存在から、自分自身を肯定する心が芽生えてきたといいます。Tさんの催しでは参加者の綴った言葉に彼が曲をつけて作品にするという共同作業があり、互いの個性を活かすことで温かな雰囲気が醸し出されています。

 私より若いTさんに倣い、私も詩を通して心の触れ合う居場所を、人々と育んでいきたいと願っています。