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活かしあう

片柳 弘史 神父

今日の心の糧イメージ

 新型コロナが猛威をふるっていた時期、うちの教会では有志たちが花壇づくりに精を出していた。教会の花壇を花でいっぱいにして、コロナ禍の重苦しい雰囲気を少しでも和らげたいと思ったのだ。

 半年、1年と続けるうちに、みるみる花壇は充実していき、わたしたちが花壇の手入れをしていると、道行く人が立ち止まって、「いつもありがとうございます。ここの花を楽しみにしています」と声をかけてくれるまでになった。そうなると、こちらもうれしくなって、ますます花壇づくりに力が入った。こうして充実していった教会の花壇は、しだいに町の評判になり、人々のささやかなの憩いの場として親しまれるようになった。

 「みんなのために何か役に立ちたい」という気持ちから始まった教会の花壇づくりは、道行く人から声をかけてもらうことで生まれた、「こんなわたしたちでも、みんなの役に立ててうれしい」という気持ちによって拍車をかけられて、豊かな実りをもたらした。これは、もしかすると、わたしたちが生きるということの一つの縮図なのではないだろうか。

 家族や友人、ご近所の仲間たちなど、自分にとって大切な人が苦しんでいるのを見るとき、わたしたちの心の中に、「この人のために何か役に立ちたい」という気持ちが生まれる。それを、愛と呼んでもいいだろう。その愛は、相手の喜ぶ顔を見るときに生まれる、「こんなわたしでも、この人の役に立ててうれしい」という気持ちによって力づけられ、さらに大きな愛に育っていく。わたしたち人間は、こうして互いに愛を育て、愛から力をもらうことによって生きているのではないだろうか。

 せっかく始めた花壇づくりを、これからも続けてゆきたいと思う。