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活かしあう

シスター 萩原 久美子

今日の心の糧イメージ

 修道院の庭先を見渡すと様々な花々や木々が元気に地面を潤している。目を凝らしてよく見ると、同じ種類の花であっても、その大きさや色合いは様々でどれをとっても同じものはない。人もまた様々で、私の友人たち一人ひとりを思い浮かべてみても、顔も格好も違えば性格もそれぞれに違う。好みのものもみなそれぞれ。それでもちょっと集まると、いろんな話題が飛び出して話は尽きることがない。

 "違い"は時に偏見や差別を生み出す。だけど、"違い"があるからこそ無限の豊かさや可能性が広がり、そしてその"違い"を活かしあうことの喜びが生まれてくるのだろう。

 大自然が美しいと思えるのは、互いの形・色合いを尊敬・尊重しあいながら、互いを活かすようにそれぞれの草木が存在しているからなのではないかと思う。そこにあるのは"同調"ではなく、"調和"なのだろう。

 私たちも、それぞれ神様に与えられた豊かな"違い"を活かしあうことで、自ずと他者に対する尊敬と尊重の念が生まれ、幸せな社会を築いていくように思う。それぞれが奏でる違った生き方を響かせ合いながら、共に美しいシンフォニー(調和)を奏でる社会となっていくことを願いたい。

 そう願う私にイエスは言う。「友のために命を捨てること。これ以上に大きな愛はない」。(ヨハネ15・13)「命を捨てること」、それは、自己と他者の違いを受け入れて、相手を活かすことでもあるように思う。自己を捨てることは、何も自分を卑下することではない。自己を捨てることによって相手が生き、そして相手が生きることによって自分自身もおのずと生きるようになる。

 それは相互の違いを認め活かしあうという謙虚な生き方にもつながっていくように思う。