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活かしあう

林 尚志 神父

今日の心の糧イメージ

 歳とって、朝起きるのがきつくなりました。身体もいろいろ文句を言います。身体の声をよく聞かなかった事も申し訳なく思っています。いつもどこか謙虚に成れません。以前、「人の話を聞きに行きます」と、近所の5歳ほど年上の先輩に告げたら「自分の身体の声も聴かないで、人の話が聴けますか」と教えられた事があります。多分、この先輩の言われることを未だ良く分かっていないのかも知れません。

 そんな時、「転ぶと自分で起きられないんだよ。私の重みで助け手も転ぶと、二人して誰かに助けてもらわないと起き上がれないんよ」と、伝えてくれた幼馴染のことを思い出します。

 高校時代に山登りを教えてくれた友です。悪天候の中、よじ登る彼の後を追い、這い上りました。大荒れに荒れた山小屋の翌朝、雲海の上に輝く朝日と遠い山々がくっきりと浮かぶ姿。その光景が私を魅了して、今がある様に思えるのです。

 その友は、病の厳しさをよく知らない私に、「駐車病だよ」と言い、「え?」「パーキング病」と告げて笑わせるのです。実際は笑い事ではない現状です。パーキンソン病で苦悩しながら、少しでも自分で動こうとしています。

 そんな彼のことを思うと、起きにくい私も身体を起こして祈り始めます。「朝未だきに わが心 主を憧れて目覚む」、子どもの頃母親から教わった祈りです。

 祈らせてくれる友は、生かしてくれる友だなとつくづく思います。

 そして「お互いに心の山登りだな」と、心で言葉を投げ掛けます。

 届いていると思います。

 人生は出会い。お互いに向き合えばいのちが流れます。森羅万象ことごとくと向き合えば活かし合う。今日、出会う道端の一輪の花にも、行き交う人とも、向き合えば活かし合えますよね。