私が心のともしびと深く関わるようになったのは、今井美沙子先生の講演会で、何度も深くうなずき、笑いの反応をしたことから始まったということは以前お話ししました。
ちょうど5年前のことです。神父の研修会が、韓国のチェジュ島で行われたとき、最後の日にチェジュ島の平和巡礼を行い、4・3(ヨン・サン)平和公園のホールで事件の説明を聞いていたときでした。
私は韓国語が解らないのですが、一生懸命話される講師の方にご苦労様の意味を込めて、大きく頷きながら聞いていました。するとだんだん講師の方の体が私の方に向き始め、私の目を見ながら話すようになったのです。後で同僚の神父たちから、「松浦神父は、韓国語が解るのですね」と問われ、「いや、全然解りません」と応えると、「あなたの聞く態度で、韓国語が解ると思ってしまったよ」と笑われてしまいました。
同様なことは、日本で働くベトナム人の神父に付いてベトナムにいったときにも起こりました。彼はメコンデルタの観光に、ベトナム人夫婦二組とツアーを組んでくれました。その神父の通訳を介して、夫婦と会話をしていたのですが、その神父がいないとき、夫婦たちは、自分たちだけで会話を楽しみ始めました。私も会話の雰囲気を味わおうと、ニコニコと頷きながら、その会話を楽しんでいました。
すると彼らは、私の方を見て話し始めたのです。私は、首を横に振って、全然解らないことを伝え、ベトナム人の神父が帰ってきたときに、「会話の意味は分からなかったけど、会話の雰囲気は楽しみましたよ」と通訳してもらいました。
人の話に頷くことは、その人を肯定し、その人と心の距離を近くすることだと、あらためて気付いたのでした。