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ひらめき

服部 剛

今日の心の糧イメージ

 ある日、友人のAさんから共通の友であるBさんとの関わりについて悩んでいるとのメールをもらいました。ちょうど私はBさんに連絡することがありメールをすると、Bさんも同じことで悩んでいるとのことでした。

 二人は詩人で朗読活動をしており、共にイベントを行うことがあります。双方の話を電話で聴くと、活動する中で考えがすれ違っているのを感じました。また、一回り以上年上のBさんが「Aさんに成長してほしい」と願うあまりAさんへの助言が厳しくなり、Aさんが心を閉ざしてしまっているようにもみえました。些細な感情のもつれを二人で解決するのではなく、ふと〈誰かが間に入ることが必要ではないか〉と感じました。

 折しも政府によるコロナ対策のマスク着用の義務化が解除され、少しずつ対面での会食が許されるようになってきた頃でした。〈やはり、人と人は互いに顔を合わせ語り合うことが大切だ〉と思いつき、私は自身の予定表を見ました。たまたま三人で会いやすい場所へ出かける用事があることに気づき、すぐさま二人に、「私がお話を聴くので、三人で会いませんか?」と電話をしました。どちらも快諾してくれたため、数日後、落ち合うことになりました。

 タイミングの良いことに店のテーブルは丸く、私たちは輪になったかたちで会食をすることができました。お互いが何を悩み、何を願っているのかについて耳を傾け、ゆっくりと語らいました。やがて、こわばっていた空気も穏やかになり、二人の間に理解し合う感情が生まれたようでした。

 温かくも忌憚のない団らんの時間は過ぎ、私は「直接会って話し合えたことはよかった」と言うと、二人は笑みをたたえて頷き、私たちは帰途に就きました。