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ひらめき

松尾 太 神父

今日の心の糧イメージ

 子どもたちと一緒におにごっこをしていたときのことです。ひとりの子がはたと立ち止まり、目を輝かせて「いいこと思いついた!」と言いました。なんだかまずい予感。「みんなでオニになって、神父様を追いかけよう!」と、すばらしいアイデアをひらめいたというふうに次々仲間たちに声をかけ、それからしばらく、ひたすら逃げ回ることとなりました。

 子どもたちの「いいこと思いついた!」はちょっとキケンです。しかし、それはあらゆる可能性を秘めたひらめきの歓喜の叫びでもあります。可能性が大きいほど危険も伴いますが、バスコ・ダ・ガマやフランシスコ・ザビエルのように、そのような輝く思いを胸に、危険を承知で知恵をしぼり、新たな世界を切り拓く人たちがいます。

 1991年、リーナス・ベネディクト・トーバルズという、フィンランドのヘルシンキ大学でコンピュータ科学を学んでいた青年は「Linux」(リナックス)と呼ばれるコンピュータを動かす基本ソフトウェア、OS(オペレーティング・システム)を創り、それを無料でインターネットに公開するという、それまで誰もしなかったことを始めて、世界を変えてしまいました。

 何か野望があったわけではありません。ただ、新しい遊びをひらめいた子どもが仲間を巻き込んでいくように、彼はそのすばらしいアイデアをだれかと共有せずにはいられませんでした。すると仲間は増え続け、皆の協力によってアイデアは磨かれて、可能性はどんどん広がっていったのです。

 まるで、「信じた人々の群れは心も思いも一つにし、一人として持ち物を自分のものだと言う者はなく、すべてを共有していた」(使徒言行録4・32)という初めのキリスト者たちのようです。